最後の嘘

いつものBARのいつもの席で、いつもとは違う表情の彼がロックグラスを傾けながら言った。

「他に好きな人が出来ちゃったんだ・・だからもうお前とは一緒にいられない・・」

徹子にはハッキリ聞こえたが、もう一度確かめる必要があった。

「ん?ゴメン、もう一回言ってくれる?」

マスターのグラスを拭く手も止まった。


ホントは大きな声で彼を問い質したかった。

ホントは私のどこがいけなかったのか聞きたかった。

ホントは好きになった人は何処の誰なのか知りたかった。

ホントは泣き崩れたかった。

ホントは別れたくなんて無かった。


でも最後までイイ女だったって思わせたくて、徹子は受け入れた「ふり」をした。

「そっか!分かった!別れてあげるよ笑。その子の事は泣かしちゃダメだよ」

「ゴメン・・・」

「謝るのやめてよぉ。なんか惨めになっちゃうじゃん。最後にもう一杯ずつ飲もうよ」


あっという間にバーボンロックを飲み干し俯いてばかりの彼に向って

楽しかった思い出を一方的に話す徹子。

最後のマティーニを飲み干したくなかった。


いつもは楽し過ぎてただのBGMだったジャズが

二人の終わりを告げる曲に聞こえた時

徹子はいつものように「帰ろっか」を意味するグラスに付いた紅を親指で拭き取る仕草をした。


独りぼっちになった徹子。

もう少し飲みたかった。

誰かと一緒にいないと胸が張り裂けそうだった。


電話で呼び出した親友の順子は強めのお酒に付き合ってくれた。

「今日は飲もっか!」

徹子の気を紛らわそうと、上司のカツラがバレバレだって話や

昨日、部屋にゴキブリが出て2時間格闘した話をした。

二人で涙が出るほど笑った。


「徹子、今なら冷静に聞けるよね?

アンタの彼の会社の同僚がアタシと友だちだって話、したでしょ?

その同僚から聞いたんだけど、、彼が悩んでたって。

会社での成績良くて、人柄も申し分ないからって

新プロジェクトの責任者を任されたらしいの。しかも赴任先はロンドンらしいのよ。

事業が軌道に乗るまで日本には帰れないから何年掛かるのかも分からないみたい。

その同僚が徹子を連れてったらどうですか?みたいな事聞いたらしいんだけど

アンタも事業立ち上げてバリバリの働き盛りじゃん?だから連れて行けないって。

今の仕事に憧れて、頑張って勉強して、苦労して、ようやく掴んだ仕事だからって。

天職でもあり生き甲斐でもある仕事を彼女から奪えないって。

だから連れてく訳にはいかないって」


涙が溢れ出した。

今まで「徹子ダム」で抑えていた涙が一気に流れ出た。


ベッドに入っても涙が止まることはなかった。

泣いて泣いて、一人泣いて

泣いて泣きつかれて寝むるまで泣いていた。


翌朝、徹子のまぶたはパンパンに腫れていた。

ヤバい!今日も仕事なのに!

どうしよう、このまぶたの腫れ。




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